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幼稚園からのおしらせ
幼稚園からのおしらせ

学校法人 三次伊達学園 三次中央幼稚園



りす 葉子せんせいの部屋 りす



平成18年度

**********番外編**********

今年度最後の“葉子せんせいの部屋”です。理事長から引継ぎ、何とかこの1年書き続ける事ができました。皆さんの心に、何かを残す事ができたとしたら本当に嬉しいです。
今回は、私が、年度末になると思い出す今から14年前のある出来事をもう一章、先生の手から巣立つ子供達に、贈りたいと思います。

**************************

『修了式・卒園式を目前に…』

たくさんの思い出を残して幕を閉じる3月、1年間を共に過ごしてきた子供達との別れはとても寂しい。毎年の事ではあるが、その年その年の子供達への想いがあり、何とも言えない物悲しさがある。子供達もまた、私達と同じ気持ちを味わっている。
年中・年長と続けて私のクラスだったさー君と呼んでいた一人の男の子と私との間にこんな事があった。

田 房「本当に、本当にさよならだね。先生はさー君が1年生になれて嬉しいのが半分、さよならする事の寂しいのが半分で変な気持ちよ。」

さー君「どうして?」

田 房「だって、ずっと仲良しだったのにね。」

さー君「じゃあ、僕にまかせて!」「一緒に1年生になれるようにしてあげるよ。」

田 房「ええっ!どうやって?」

さー君「校長先生に頼んであげるよ。前は園長先生(現 理事長)に頼んであげたから同じクラスになれたでしょ。(年中組から年長組になる時に彼は葉子先生と同じ組にしてくださいとお願いに行った事があったのだ。)今度は学校だから、校長先生に頼まなくっちゃダメなんだ。」

それから、入学説明会などで何度か学校に行く事があり、彼は校長先生に直々にお願いしようと試みたようだが、その勇気がなかったのか翌日幼稚園に来て「昨日も言えなかったんだ…。」と小さな声で報告してくれた。彼の本気な様子に、それは無理な話だという事をどう話してやろうかと考えると、ただただ辛かった。ついに明日が卒園式。その夜、家の電話が鳴った。

田 房「もしもし、田房です。」 電話の向こうからは、何も聞こえない。しばらくするといきなり子供の声で…

さー君「あのねぇ、ぼくと園長先生とどっちをとる?」その声は確かにさー君だった。驚いた。

田 房「さー君、どうしたの?」

さー君「あのね、さっき園長先生に電話したんだ。葉子先生と一緒に1年生になってもいいですか?って。そうしたらね、園長先生は『困ったなぁ、園長先生も田房葉子先生がいなくなっちゃうと寂しくなるからねぇ。園長先生には決められないから、葉子先生にどうするか決めてもらったら?』って言われたんだ。もうぼくにも決められない。ねぇ先生!ぼくと園長先生とどっちをとるか決めて!」

彼のお母さんの話によると、自分で電話番号を調べて園長先生に電話をしたという。私は、彼が受話器の向こうで一生懸命話している声を聞きながら泣いていた。さよならが迫っているという実感と彼の気持ちの重みを感じ、心で『ありがとう』と言いながら、ただただ泣いていた。涙声をおさえて、「さー君ありがとうね。明日はかっこよく卒園証書を受け取ってね。」…そう言うのが精一杯だった。
電話をきって、私は心を落ち着かせ、彼に手紙を書く事にした。明日はきっと涙で言葉にならないと思ったからだ。
翌日、ついに来てしまった卒園式。式の間ずっと一人ひとりの顔を見ながら、その子達との日々を思い出していた。式が終わり、私はさー君に手紙を渡した。

田 房「さー君、昨日はお電話ありがとう。これに昨日のお返事を書いておいたから、家に帰って静かに読んでね。」

さー君「うん。ありがとう。」 

田 房「また遊ぼうね。」「幼稚園に遊びにおいでね。」「元気で頑張ってね。」

一人ひとりに声をかけ手を振った。
その夜、彼のお母さんから電話がかかった。

母 「お手紙をありがとうございました。彼は、声を出して読んでいたのですが、4枚目から急に聞こえなくなって…。あの子、目を押さえて泣いていました。『何だかわかんないけど、涙が出てくるんだよ。』って。」今は、まだその涙の意味が彼自身にも理解できなくても、彼の人生の中で同じような場面に出くわした時、初めてその意味をわかってくれるだろう。私はその手紙にこう書いた。

  だいすきなさーくんへ。
きょうは、そつえんおめでとう。せんせいはいま、こころをこめてこのてがみをかいています。さーくんとのおもいでがたくさんできて、せんせいはとってもうれしいよ。よーくかんがえたんだけど、やっぱりせんせいはいちねんせいにはなりません。さーくんが、にゅうえんしてくるとき、せんせいはどんなおとこのこかなってたのしみにまっていました。そして、おもったとおりとてもすてきなさーくんでした。さーくんのにゅうえんをたのしみにまっていたあのときのようこせんせいとおなじように、こんどは、がっこうで、さーくんをまってくれているせんせいがたくさんいるはずです。これからは、たくさんのひととであい、うれしいことやたのしいこと、そしてかなしいこともけいけんしてほしいの。『こんにちは』ってであったら『さよなら』だってあるんだよ。すこしむずかしいかもしれないけれど、そうしていくうちにもっともっとさーくんはすてきになれるんだよ。せんせいは、いつでもさーくんのみかただからね。いままではさーくんのちかくでおうえんしていたけど、こんどは、ちょっぴりはなれたところからさーくんをおうえんしているからね。きっときっとがんばってね。
さーくんのこと、ずーっとすきだよ。
さーくんのこと、ずーっとわすれないよ。
ほんとうにたくさんのおもいでをありがとう。
たぶさようこせんせいより


著:田房 葉子『あそべやあそべ』より抜粋




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