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幼稚園からのおしらせ
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学校法人 三次伊達学園 三次中央幼稚園



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『“抱っこ”からの卒業』     2019年6月28日

 雨上がりの山の輪郭がくっきりしています。遠い山々だけでなく、幼稚園の庭に植わっている木々も雨に洗われて、一枚一枚の葉の緑色が濃く見えてとてもきれいです。今の季節、園庭の中を流れる小川では、毎日、朝から水槽や牛乳パックを持った子供達で賑わっています。小さなエビやザリガニの赤ちゃんを探したり、カエルを捕まえたり、鯉を追いかけたり(ちょっと可哀そうですが……)して、時に靴や着替えた体操服を濡らしたりしながら夢中になって遊んでいます。

 そんな時の事です。年少組の男の子が水を汲むために持って来たバケツを取り合って揉めていました。しばらく様子を見ていましたが、バケツを引っ張り合ってばかりで解決しそうになかったので、「どうしたの?」と近くに行って声を掛けました。「貸してくれない!」と泣き始めました。いろいろと事情を聞きましたが、たくさんの子が集まって来て色々な事を言うので、よくわからないまま、私は、泣いている子の涙が止まるまで黙って抱っこしていました。落ち着いた頃に「“貸して”って言ってみる?」と言うと、その子は私の腕から降りて、再び相手の子の傍に行きました。“貸して”と言うのかと思いきや、何事もなかったように、バケツを使っている子と一緒にスコップを持って水を汲み始めました。あれだけ大きな声で泣いて訴えていたのに、抱っこされている間にその子の中に何が起こったのか、気持ちを持ちなおし、一緒に遊び始めたのです。

 朝、お母さんとすんなり別れられない新入園児がいます。

「ママ!ママ〜!」と泣くその子を抱っこで受け入れ、保育室まで連れて行きます。なかなか涙が止まらない時には、ゆっくりゆっくりおしゃべりして寄り道しながら保育室前まで行きます。気を紛らわしたり、“わかるよ”と淋しさを受け入れたりして気持ちに寄り添うのです。落ち着いて来たら、地面に降ろして手をつないで歩いて送ります。すると、ちゃんと自分で靴を脱いで保育室に向かって行きます。抱っこされている間にどんな決心をしたのでしょう?

 また、先日、全園児が集まってお誕生会をしました。大勢で集まると気持ちが落ち着かなくて、うろうろ歩き回ってしまう子がいます。先生が、「おいで」と膝に座らせました。両腕で包み込まれるように、安心した顔をして落ち着いて参加する事が出来ていました。いろいろな場面で先生達も抱っこをします。

抱っこには、不思議な力があるようです。赤ちゃんの間は“抱っこ癖”など気にしないでしっかり抱いてあげましょう…とよく言われます。この時の心地良さが心を安定させて心の成長に大きく関わって来るのだそうです。抱っこによる心のコミュニケーションです。では、子供にとって“抱っこ”は、いつまで…どこまで必要なのでしょうか?勿論、心のコミュニケーションはずっとずっと必要です。抱っこは、成長に合わせて、する側の気の持ち様をほんの少し変えていく必要があるのではないかと思います。子供達にとって、“抱っこ”は、温もりを感じながらできる気持ちのはけ口だったり、反省の場であったり、冷静を取り戻す場であったり、心を決めたり、気持ちを転換できる場所だったりするような気がします。大きくなるにつれて、赤ちゃんの時のまま“甘えたい気持ちを受け入れる”、“愛情を伝える”──の気持ちだけで抱っこするのではなく、この腕の中で、この子がどれだけ『自立』に向かう充電ができるかな?と思いながら抱っこしてあげてください。腕の中でできた充電で心が前向きになる『自立』へのエンジンをかける場所にしてあげてください。そして、少しずつ“抱っこ”に代わる心のコミュニケーションを見つけてみてください。身体の触れ合い、温かい声をかける、じっくり対話する等々、いろいろありそうです。

入園してからずっと車から中門まで抱っこされ、お母さんと中門で離れる時に涙が出たり、お母さんに連れて行ってもらったり、長い長い時間お母さんと話をしてからでないと幼稚園に入っていけなかったある女の子がいました。年中組が終わる頃だったと思います、「ねえ、○○ちゃん、明日は、お母さんとタッチ1回ムギュ〜1回で、パッ!と歩いてテラスまで行ってみたら?絶対にお母さんをビックリさせようよ!」と、その子と一緒に“ビックリ作戦”を企んだ感じで言ってみました。その子は少しニンマリして「うん」と言ってくれました。「そう?!じゃあ、葉子先生明日、双眼鏡(両手で双眼鏡ポーズ)で見てるね。お母さん何て言うかな?」と冗談っぽく話しました。次の日、その瞬間を逃さないように、中門で待ち構えていると、約束通り、タッチとムギュ〜を1回してパッ!と歩いて保育室に向かって行ったのです。“抱っこ”からの卒業の瞬間でした。年長組になった今ではお母さんと笑顔で「行ってきます」と言えています。そんな自分の事が気に入っているみたいで嬉しそうです。お母さんは今ではいつもその女の子を笑顔で「今日も楽しんでおいで」と声をかけ、求められればギュギュ〜っと抱きしめて見送ってくださいます。“抱っこ”はなくても、違う心のコミュニケーションで、『自立』する我が子の背中を見つめておられるのです。抱っこをする親の気持ちをどう成長に合わせて変えて行くのか……急ぐ必要はありません。私達大人の方も“赤ちゃん抱っこ”から“大人に向かう抱っこ”にいつか変えて行くその準備をする必要があるのかもしれませんね。

田房葉子





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