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幼稚園からのおしらせ
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学校法人 三次伊達学園 三次中央幼稚園



りす りす




『雨ふりギャング』 2020年9月30日

台風10号が過ぎ去った数日後、雨降りの朝の事です。私はいつものように中門で子供達を迎えていました。通常なら小さな門の方を開けて迎えるのですが、その日は雨降りだったため傘をさして登園する子も多いので、大きな門を開けて広くして迎えていました。少しずつ子供達が「おはようございます!」と元気にやって来ます。そのうち雨が大降りになり、迎える私も登園してくる子供達も送るお父さんやお母さんも大騒ぎです。しばらくすると小降りになりました。それからは、少し晴れ間ものぞいてきて暑ささえ感じられるようになりました。さっきまで、誰もいなかった園庭に少しずつ子供達が保育室から出て来ました。雨が止むのを「待っていました!」とばかりに、ある子は小川の方へ向かって走って行きます。ザリガニや魚やカエル、虫を見つけに集まるのです。またある子は、いつも水溜まりができる場所に向かいます。長靴を履いて水あそびをするのです。年長組の子供達は小川の近くの木の枝に手を伸ばしてつかみ、揺すって雨粒を散らしながら「雨だ〜!」と言って歓声をあげています。飛び散る雨水に濡れながら喜んでいます。いつもの朝の光景に戻って来たな……と思っていた矢先、またまた雨が……。その時、園舎の方から小さな子供達が傘をさしてやって来ました。満3歳児の子供達です。先生も一緒に出て来て。みんなで傘をさして中門の所に集まって来ました。次々に登園して来る友達に「おはよう!おはよう!」と声をかけてくれていました。ちょっとした“あいさつ運動”でした。可愛い生徒会(笑)達のその姿を見て何人もの保護者の方が「可愛い!」と声をかけてくださいました。そんなさつき組の様子に触発されてか、他の学年の子供達も傘をさして園庭に出て来ました。子供達の表情はいつもにも増して生き生きとして見えます。

そればかりではなく、いつもならお母さんに抱っこされてやって来る子供も、お母さんが持ってくれている傘を取り自分でさして意気揚々と中門を入って行く子もいて驚きました。長靴や傘を私に「みて!みて!○○ちゃんと同じなんだよ」「この傘、ここから見えるんだよ」「ここにリボンが付いてるの」と言って見せてくれます。ウキウキの様子でした。部屋に入っても、相変わらず満3歳児の子供達はテラスで傘を持って遊んでいました。私がそこを通ろうとすると先生が「アッ!園長先生だ!隠れろ〜!」と大きな声で言いました。すると、子供達はみんな傘をさして集まりしゃがみ込んでじっとしているのです。見つかり過ぎる(笑)その可愛いかくれんぼに笑ってしまいました。

私達大人は天気予報で「明日は雨」と聞くと「あ〜ぁ、雨か」と少しがっかりします。「明日は暑く(寒く)なるでしょう」と聞くと「あ〜ぁ、明日も暑くて(寒くて)大変だ」と変に覚悟を決めてしぶしぶ過ごします。天気で左右される仕事を持つ人は、その逆の捉え方があるかもしれませんが、日常だけを考えたら概ね持つ雨のイメージや晴れのイメージは一緒ではないでしょうか?でも、子供達は、雨降りでも暑さの中でも寒さのなかでも、きっとそれはそれで楽しみ方を知っているのだと思います。家の中でも外でも、いろいろな物をあそびに使い楽しめる方法を何となくわかっているようです。 “そうならそうで、こうしよう”とか“そうならば、こんな事ができる”と、ポジティブにその環境を捉える事ができる子供達は生き生きとしてたくましいです。大人がネガティブなイメージをつくってしまっているのかもしれません。

そんな事を考えている時、車の中で聴いた朝のあるラジオ放送の一言がその時の事と結びつきました。※ ギブソンの“アフォ―ダンス理論”というものです。『アフォ―ダンス──“環境が人間に与える意味”』……例えば、子供達はそれまでの経験から、そこに傘があれば“雨でも外を歩ける”。また、長靴があれば“水たまりに入っても大丈夫”。そしてまた、雨上がりには木々を濡らし小川の水は増え、魚やカエル等の生き物みんなが動き出す──そう認識しています。そして、これらの環境から見出した価値観で「おもしろい!」「楽しい!」とまっしぐらにそこに向かい遊び出すのです。自分の置かれた環境や状況を受け、いろいろな心の動きや行動に結びつけるのです。そのラジオ放送を私は運転しながらぼんやり聴いていたので、明確には理解できていないかもしれませんが、それまでの経験により、人間が様々な物事に対して抱いた価値観を自分の行動や発言に結び付けていく事を『アフォ―ダンスの理論』なのだと私なりに解釈しました。
子供達が感じる前に大人の価値観で物事を誘導するのではなく、子供達が今ある環境の中で……先入観無しで価値観をもち行動に移す事は、世界を広げる事にも繋がります。“雨なら雨で…”“暑ければ暑さの中で…”“寒くても寒さの中で…”と、どんな状況の中でも楽しく過ごせるのです。何度もこのような気持ちを味わう経験を重ねると、物の考え方にも広がりがあり、少しの困難や悲しみ苦しみにも発想転換しながら正面から向き合える大人になっていくような気がします。

幼い頃にいかにたくさんの種類の環境と出会わせてあげる事ができるかで、子供達のものの考え方や生きていく方法や力に結びついていくかが問われるのではないかと思います。季節と共に、おもむきを変える園庭にはそうした様々な子供達の心をくすぐる環境があります。大人にとってはうっとおしく感じられる天気も子供達にとっては楽しく遊ぶための格好の条件になるのです。そして、“おもしろい”と思えばそこにある物が皆楽しい物に見えてくる……“嬉しい”という感情を持っていれば、周りの景色までもが素敵に見えたりありがたく思えたりする……その環境が子供達に何かの意味を与える──そう思って、子供達の素直に感じた心を大切にしていかなければならないのだろうと思います。

雨ふりのギャング達は、将来のたのもしい金のたまごです。木の枝を揺すって遊ぶ“びしょぬれギャング”も、素手でつぶれそうなほどカエルや虫をつかむ“残虐ギャング”も、お気に入りの傘と長靴でわざわざ水たまりを歩く“可愛いギャング”も、みんな世界と考え方を広げるための大切な環境との出会いをしているのです。今のうち……純粋な目で、心でいろいろな物を見渡せる幼い子供のうちに、たくさんの環境に出会わせてあげたいものです。
※ジェームズ・ギブソン(知覚心理学者)

田房葉子





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