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幼稚園からのおしらせ
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学校法人 三次伊達学園 三次中央幼稚園



りす 葉子せんせいの部屋 りす





『丁度いい距離』     平成30年5月31日

新年度が始まって2カ月が経とうとしています。新入児達も、入園したばかりの4月の様子とは少しずつ変わって来ました。ただただ不安気だった子供達に、幼稚園の一日の流れがわかり、少し周りを見渡す余裕が出て来ました。楽しみな事ややりたい事も見つけられるようになりました。それでもまだまだ、慣れるのに時間がかかり、涙なしには登園できない子もいます。焦る事はありません。入園するまでの生活や自分を取り巻く人の顔ぶれが違い過ぎて、その違いを受け入れるのに時間がかかっているだけです。必ず慣れる時はやって来ます。こんな様子は、新入児に限った事ではありません。クラスや担任が変わって新しい環境にまだ慣れきれていない進級児達が戸惑いながら過ごしている様子も見かけます。どの子も、今はまだ新たな一歩を踏み出したばかりです。とにかく見守ってあげていてください。

私は、毎朝中門に立って子供達が登園するのを迎えます。

「お母さんがいい!」と泣く子。「行かない!」とお母さんに抱かれたままで幼稚園に来る子。笑顔いっぱいで元気よくやってくる子……様々です。

年少組のある男の子が、入園したばかりの頃、毎日泣きながら登園していました。お母さんに抱かれて泣きじゃくっていたので、お母さんからバトンタッチで私が抱っこをして、保育室まで連れて行きます。しばらくはこの繰り返しの毎日でした。あの手この手で気持ちを落ち着かせようと試みますが、涙がポロポロ流れます。その時に感じる中門から保育室までの距離の長いこと……。ある日、「出席シールを貼ったら、あの砂場で一緒にあそぼうか?」と砂場に誘ってみました。一瞬泣き止み砂場を見ます。一緒にシールを貼って砂場に行くと、ヒクヒクしながら小さなスコップを手に砂あそびをしていました。その次の日から、少し変化が見られました。お母さんと泣いて登園するのは相変わらずでしたが、「○○君おはよう!今日も砂場であそぼうか?」と言うと「おかあさん、おかあさん……」と言いながらも、お母さんから離れ、すんなり私に抱っこをさせてくれるようになったのです。長く感じていた保育室までの距離が、少し短く感じました。そして、担任の待つ保育室まで送って行きました。それからは、担任の先生が丁寧に迎えてくれて、荷物の整理やシール貼りを済ませ、カラー帽子を被って外へ出てきます。そして砂場へ……。またこの繰り返しの日が何日も続きました。

なある日、ふと気が付くと、その子がカラー帽子をチョコンと頭の上に乗せたように被り、一人で砂あそびをしていたのです。好きなあそびがみつかったんだなと思いました。少し離れた所からその様子を見ていたら、黙々と小さなスコップで砂を掘っていました。もう涙は見えません。その頃から、その子は、中門でお母さんから離れる時に「おかあさん……」とは言うものの「砂場に行こうか?」と声をかけるだけで、お母さんから泣かずに離れられるようになりました。私もつないだ手をその距離の半分くらいで放し、「先生が待ってくれてるよ。行ってごらん。」と言うと、ジワジワと一人で途中から保育室に向かって行けるようになったのです。振り返りながらですが、担任の先生が待つ部屋に…。そして、今ではもう誰かを頼らなくても、一人で歩いて行けるようになっています。その子にとって、中門から保育室までの距離はすごく長く心細いものだったに違いありません。きっと、今までこんなにお母さんから離れ、お母さんのいない場所に一人で歩く事はなかったでしょう。でも、自分の好きなあそびや好きな先生や友達の存在に気づき、「先生に会える」「砂場で遊ぼう」「友達と遊ぼう」という目的や楽しみが見つかると、その長い距離も少しずつ短く感じられるようになるのです。幼稚園の環境には、子供たちの興味や遊び心をくすぐる物や場所がたくさんあります。周りに目を向ける余裕が出てきたら、この男の子のようにお母さんの手から離れ一人で歩き出せるようになってきます。そして、どんどん楽しい事を見つけられるようになります。中門から保育室までの距離は、子供たちの心の踏ん切りや気持ちを落ち着かせる……そして、周りの様子に目を向けるためには、丁度いい距離のような気がします。まだまだお母さんと一緒でなければ、保育室まで行く事ができない子も、少しずつ少しずつ、遊んでいる友達や、小川やアスレチック、砂場やなかよし動物園etc.を見回せるようになり、なんだ、よく見たらこんなに楽しそうなものがいっぱいあるじゃないか!と気づけるようになります。上手に先生にバトンタッチできたら、私たちは、抱きしめながら、保育室までの長い距離をゆっくり歩き、その子の寂しさも心細さも受け入れ目いっぱいに溜めた涙をぬぐってあげて、楽しいものがよく見えるようにしてあげたいと思っています。

おうちの人がいない時間、いない場所だからこそ出来る事や育つ事があります。そんな時間を過ごして、帰っていく子供たちの表情は、朝とは少し違っています。きっと、おうちの人から離れて過ごすこの時間も、朝歩いて行く中門から保育室までの距離も、子供たちにとっては丁度いい心の距離なのだと思います。どうか、いろいろな様子のどの子供達の事も、見守っていてください。

田房葉子





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