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幼稚園からのおしらせ
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学校法人 三次伊達学園 三次中央幼稚園



りす りす




『絵本の世界を楽しむ』    2021年5月31日

新型コロナウイルスの感染拡大が依然として収まらない状況です。わずか数年前なのに、マスクをせず出かけたり人と会ったり集まったりしていた世の中を懐かしく思えたりもします。辛抱辛抱の日々、外出自粛を余儀なくされている今、家庭での過ごし方も以前より変わってきているのではないでしょうか?または、どう過ごせば良いかと悩まれていたりするのでは?

さて、そんな中、1才8カ月になる幼稚園の先生のお子さんと、毎日子守りを任されているおばあちゃんとの微笑ましい話題に触れ癒されました。そのおばあちゃんは、毎日、忙しく帰りが遅くなるお母さんを 孫が良い子で待てるように、いろいろと楽しませてくださっているようです。お母さんである先生は、おばあちゃんが動画に撮ってくださるその様子を時々私に見せてくれます。おばあちゃんと一緒にお墓参りをしたり、自分で一生懸命ご飯を食べたり、庭でおてんばしていたり……。そんな可愛い様子には、それを見るだけでも癒されます。「園長先生!ちょっと見てください。」とその日、見せてくれた動画は、おばあちゃんとその日仕事が休みだったお父さんと三人でホットケーキを作っている様子でした。どうやら絵本『しろくまちゃんのほっとけーき』を読んでもらいながら作っていたようでした。どろどろのホットケーキのタネをおたまで上手にホットプレートの上に乗せていました。2才にもならない子がひとりでするのですからテーブルのあちらこちらも、ぽたぽた どろどろです。「あ~ぁ」と思わず声が出てしまう程でしたが、そのおばあちゃんとお父さんは、それを楽しんでおられるようでした。「○○ちゃん、今、どこ?ぽたあん どろどろ」しばらくすると「ぴちぴちぴち ぷつぷつ」と絵本のシーンを追いながら焼けるのを三人で待っておられました。そして、焼きあがると、その子は満面の笑みで食べていました。

幼稚園でも、その本のホットケーキが焼けるページを読みながら「だんだん焼けて来たね、ちょっと匂ってみる?」と、絵本を子供達の鼻に近づけると「わ~!ほんと!いい匂い!」と言って、ホットケーキが焼けるいい匂いがさもしているかのような反応をします。その時に子供達が思い浮かべている匂いは、これまでに自分が嗅いだ事のある数々の香りの引き出しの中からホットケーキやお菓子の匂いを取り出してイメージしているのです。

年中組の先生がそらまめのさやを持って来て、子供達に剥く体験をさせていました。『そらまめくんのベッド』という絵本を読んで、実際にそらまめを見せてあげようと思ったようでした。「くものようにふわふわでわたのようにあったかい」というフレーズがありますが、そらまめのさやの中を実際に見ていないと、その部分が子供達の頭の中でイメージが湧きにくいのです。剥いてみてふわふわした綿で豆が包まれている事を知ると、まるでベッドのようだ!と感動します。そして、子供達は、そのそらまめに目や口や手足をくっつけてイメージし、そらまめ君達の冒険を一緒に楽しむのです。実際にさやの中のふわふわの綿を見たからこそ、そらまめ君達が眠るベッドが本当に気持ちよさそうだと想像できるのです。 

その少し前にはその先生が大きな背の高いたけのこを持って来てくれていました。皮を剥いた後、子供達が「たけのこが百何枚(?)も皮の服を着てたんよ!」と興奮しながら教えてくれました。「このたけのこが大きくなったら何になるか知ってる?」と聞くと「うん!竹!竹の子供だから“たけのこ”なんだよ。」と自信たっぷりに答えてくれました。「そのたけのこ、もしかしたら大きくなってかぐや姫が入る竹だったかもしれないね。」と言うと、昔話がピンとこなかったのか、たけのこと竹とが結びつかなかったのか、キョトンとして残念ながら盛り上がりませんでした。でも、いつかまたその子達が竹を見た時に、何百枚もの皮の服を着たたけのこの事を思い出し、“かぐや姫”の話とその時の感触や匂いや重みを繫ぎ合わせてイメージを膨らませて楽しむ事ができるでしょう。

私が、満3歳児クラスを担任していた10年以上も前の事…。子供達は『おおきなかぶ』の絵本が大好きで、何度も何度も読み聞かせていました。「うんとこしょ どっこいしょ。それでもかぶはぬけません」と繰り返すフレーズがお気に入りのようでした。その頃、我が家の畑にたくさんの大根が育ったので、子供達に大根を抜かせたいと思い、園バスで畑に連れて行った事がありました。小さな子供達が隠れそうなくらいの大きく長い大根の葉を皆でつかんで抜こうとしました。当然の事ながら、ちょっとやそっとでは抜けません。私が、「先生でも抜けなーい!助けて~」と言うと、子供達がどんどん私の後ろに繋がってしぜんに「うんとこしょ どっこいしょ うんとこしょ どっこいしょ!」という掛け声が聞かれ、尻もちつきながら力いっぱい引っこ抜こうと頑張っていました。子供達は、絵本の中のそのシーンを実際に体験した事で、おおきなかぶを抜く時に、どこに力を入れて、どんな風に踏ん張って、どんなに大変な事かがはっきりイメージできて、もっと『おおきなかぶ』の絵本が好きになりました。

絵本を食い入るように見てお話を聞く子供達、そこに出てくる物や景色を実際に見たり触れたりする事で、絵本の世界が実写版になって感じ方に広がりができます。その話の中に自分を登場させて心を躍らせながら、いろいろな人や動植物を自分の身近なものとして慈しみ大切に思う心や、夢を抱く心が育っていくような気がします。

子供達は“空想の世界”と自分が体験した事がある“現実の世界”とをリンクさせて自分なりにイメージを広げ、その絵本の物語に入り込んでいきます。絵本の世界の登場人物と一緒にホットケーキを作っている気分になったり気持ちよさそうなベッドに一緒に入ったりして、しろくまちゃんやそらまめ君達の嬉しかったり楽しかったりする気持ちを想像する事が出来るでしょう。そして、豊かな感性が育っていくのだと思います。人の心や周りの空気を見たり触れたり感じたりしてイメージできる力は、これから先、どんどん世界を広げていく子供達にとって、そこに順応して生きて行く力に結びついていくのではないかと思うのです。
  『しろくまちゃんのほっとけーき』
わかやま けん 作
こぐま社
   『そらまめくんのベッド』
なかや みわ 作
福音館書店
   『おおきなかぶ』
A・トルストイ 作
福音館書店
この文章を考えている最中、世界中の子供達に親しまれている絵本『はらぺこあおむし』の絵本作家 エリックカールさんの哀しい知らせが届きました。手掛けられた数々の絵本はこれからも子供達の心の世界を豊かに広げてくれることでしょう。

田房葉子



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